『Reader』

「こんにちは。初めまして、まず私を見つけてくれてありがとうございます。私のことは【Reader】と呼んでください。私はあなたと友達になりたいです。もし、あなたが良ければ次のメモを探して下さい。」

綺麗な字でそう書かれた紙片が古本屋で買ってきた本に挟まれていた。

買ったのはある男子大学生だった。

彼はメモの裏に書いてあった古本屋に行き、指定された本を買った。

指定された本にはまたメモが挟まれていた。

彼は新しいメモを見つけるとすぐに裏をめくり指定された本を買いに走った。

買った本とメモは移動中に読んだ。

メモには色々な事が書いてあった。

彼女の家族のこと、好きな食べ物のこと、方向音痴なこと、彼女が今ハマっていること、彼女の性格等など。それは彼女から彼への一方的な手紙だった。

そうして、彼は彼女に恋をした。

まだ会ったこともない彼女の事を想像した。
会いたくて会いたくてたまらなくなった。
彼は彼女の髪に触れたくなった。

だが、彼女の名前も住所も、電話番号も分からないのでどうにも出来なかった。

彼には雪が降る中、寒さと闘いながら、懸命に彼女からの手紙を探すことしか出来なかった。

買った本が一人暮らしの部屋の半分を占めた時、新しく見つけた手紙に彼女の家の住所が書いてあった。

彼は見つけた瞬間走った。
1秒でも速く彼女に会いたかった。

ピンポン
...はい
「こんにちは。Readerの友達です。」そう言うとインターホン越しに嗚咽が聞こえた。

出たのはReaderの母だった。

彼は本を受け取った。

「ここまで私の事を探して、見つけてくれてありがとう。私はここまでしてくれた君のことが大好きよ。私の本当の名前は桜。君はきっと、私に会ってみたいと思っていたことでしょうね。でも、ごめんなさい、私は病気で死んでしまったの。だから、幽霊になって...」

「私はずっとあなたの側にいたの。」

その瞬間開けていた玄関のドアから彼を包み込むように桜吹雪が起こった。

ふわりといい香りがした。

季節は春だった。

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