目の前の窓に映る自分を見て、この空間は何なのだろうと、思う。
よくある駅の近くのカフェ、窓際に設置されたカウンタータイプの席で、甘くしたアイスカフェラテをストローでくるくる回して氷を鳴らしてみる。
午後9時ジャスト、家に帰らぬもの、カウンター席に、多数。
ひとりひとりになぜ家に帰らないのかを問いただしたい衝動に駈られる。もちろんそんなことはしない。
そう、少なくともわたしは、家に帰りたくない。
昼間は忙しく行き交う人たちを見下ろせる窓際が今は鏡のようになっていて、暗い自分の顔を写し出している。
目が、あった。
パソコンをカタカタと鳴らす、隣の隣の席の、男の人。
「Are you sleep?」
音を出さず、聞いてみる。
んー、と腕を伸ばしてから、肩をすくめて、彼ははにかんでみせた。
カフェラテをくるくるまぜるけど、氷は溶けて、音が鳴らない。
やさしい夜だと、やさしい世界だなと、思った。
優しい雰囲気、好き。
あざます!