『帰省』

夢を持って上京したんだ。
でも、周りから言われたとおりの結果だった。
昔は田舎暮らしが嫌でたまらなかったけど、今思えば帰るところがあっていい。
でもさ、こうやって、失敗したら帰るところがある、とか思う甘えが失敗した理由だったとしたら、やっぱり田舎は損だ。
駅から降りたらひたすら一本道、するといつもの壁がある。
甘い味の壁。
真っ白でクリームたっぷり。
これを食べて食べて、通れるくらい穴があくまで食べなきゃ家には着かない。
回り道なんてないんだ、田舎には。
こんなんだったら紅茶持ってきたらよかった。
そう思うと、横に紅茶が置いてあることに気づいた。
さすが田舎だなぁ。
やっとの思いで通れるくらい食べ終わる。
壁をくぐるとそこは林の中、道すらない。

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