『下手くそな歌をキミへ(きみが)』

初めて好きな人が出来た時歌を作ろうと思った。今ならやらないだろう、でも作ろうと思った自分がいたからこそそう思った。

その時の自分は気持ちを何か形にしたかった。多分通学中に路上で歌っていたミュージシャンの歌に影響されていたんだと思う。始めが大事って張り切っていた。

そして行動。

まず歌を作る前にこのことは自分だけの秘密とした。流石に言いふらす気にはならなかったんだろうね。

だって、片思いだったから。

でも何も知識がない人がそう簡単に作れるはずもなく、晴れの日、雨の日、風が強い日、4月、5月、6月と月日は過ぎていった。

部活に入ってなかった自分は中学校が終わるとすぐに家の裏にある公園へ文房具屋で買った真っ赤なノートとマッキーを持って出かけた。

曲作りは難しい。最初はギターを習うと意気込んでいた自分だったが周りにギターを弾ける人がいなかった。

友達に言い難いため頼れず、今なら電車に乗って遠くの音楽教室に通うとか出来ただろうけど当時は中学生。

お小遣いも少なく、そして近くにギター教室がなかったため諦めるしかなかった。

ただし書いたものをただ読むだけだと歌じゃない。なので作詞をしたら歌詞にメロディを口ずさんでそれを携帯電話に録音する。それを繰り返してひとつの曲を作りアカペラで歌うという歌と言ってよいのか分からない方法で作ることにした。

本当に何も知らなかった。ほぼ人力、調べないまま手探りでやるのが楽しかった部分もあると思う。でも1番割合を占めていたのは自分だけで完成させたい気持ちだった。

自分だけで作れたら彼女が喜ぶと思ったから。

そもそもどうして好きになったのか。幼稚園からずっと一緒に来てた彼女に何故恋をしたのか。

それは曲を作ろうと考えた1か月前のある出来事が関係していた。

[下手くそな歌をキミへ(いちばん)に続く]

今日明日中に続きを投稿します。10月11日までに完結予定です。このショートショートが終わり次第、完結していないお話の続きを書いていきます。