『不眠症』

エチゾラムの向こうの窓を開けようよ。
満点の星空なんてない。
眠れない布団に潜り込み宇宙ばかり眺める。

空虚なヒュプノス、僕は不眠症。

いまもまた死に損なってここにいる。
日常は朝になる。宇宙は白くなってゆき。
空っぽの腐乱死体のような僕には虚ろな思考回路。

染みを数える。
僕は染みばかり残してきた。
この心の痙攣の原因はわからない。
不感症かもしれない。

躁鬱病を繰り返し、
胃痙攣と過呼吸発作。

君を上から眺めるヒュプノスに問う。
「どうだい不様かい」
ヒュプノスは笑っている、かもしれない。

夜の微睡みは晴れて行く。
かれこれ48回目の幻。
吐き出したいのはなんなんだ。
君はどうしてそこにいるんだ。
空っぽの呼吸が絡み付く。
ただ一筋の流れ星は、
何も幸せにはしないよ。

今日もまた寝れないか。
いつまで自分と向き合うの。
目を擦ってみてみろよ。
何もかも棄てて発狂した君を僕は見届けるさ。
明日になっても変わらない。

寝れない今日が終わらないのは死にたくないからだ。

そうかもしれない。

目蓋が落ちても幻なのは、大して意味がないからだ。

妥協も発狂も怠惰も勧善懲悪。
君、もう少しで眠くなるよ。

さぁさようならしよう。
また明日を迎えよう。
過剰なほどのエチゾラム。
さぁ、さようならをしよう。

次に目覚めるのはきっと。
滅菌された明日だろうよ。

さようなら
おやすみなさい。

静寂のヒュプノス、不眠症の僕。

さよなら今日と
また来て明日。
痙攣発作は止まらない。

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