『サタデー・イン・ザ・パーク』

ここは大きな公園。
晴れた日の休日で、とても賑やかだ。犬の散歩、キャッチボール、ジョギング。大勢が休日を楽しんでいた。

ベンチに一組の老夫婦が座っていた。
ふたりとも沈んだ表情で、高層ビル群を見ていた。
「どうします?」と、老婦人。
「決めただろ?」と、老紳士。
「そうですね、あら…」
「どうした?」
「わっ…すごい……驚いた!」

「キャー、それぼくのォ」
「あたしのォ」
子供達の歓声だった。

「なにが?」と、老紳士。
「1等よ!」と、老婦人は立ち上がった。
老婦人の膝から新聞が落ちた。
ふたりは、しばらく無言だった。
老紳士が新聞を拾い上げ、くじと照合した。
「宝くじが1等……じゃあ、やめるか」と、老紳士が笑った。久しぶりの笑顔だった。
「ねえ、何か食べましょ?」と、老婦人も笑った。彼女の笑顔も久しぶりだった。

実は、ふたりは飛び降り自殺するつもりだった。
事業の失敗で、多額の借金があったから。
さて、当たった宝くじの1等は700万ドル(7億円以上)。借金の三倍以上である。

「よいしょ…」
ゆっくりと老紳士も立ち上がり、そして…ふたりは楽しそうに歩いていった。
ふたりは何を食べるのだろう?

ここは大きな公園。
晴れた日の休日で、犬の散歩、キャッチボール、ジョギング。大勢が休日を楽しんでいた。
<おわり>

あとがき。
短編小説を書いた。
思いつきで、演繹法。
2018年12月8日(土)23時過ぎ。

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