『朝のコンビニ』

「あの、突然すみません。いつも見かけてて…よかったら、連絡先を教えてもらえませんか?」

毎朝通勤前に立ち寄るコンビニで、
イケメンサラリーマンに声をかけられた。

こんなカッコいい人が…
怪しい!
この草食男子が蔓延するこの日本に。
特別な美女でもない、アラサー行き遅れなわたしに?
新手の詐欺?!

「ごめんなさい、お気持ちは嬉しいのですが。」

「いきなりですもんね、失礼しました。」

彼は、ぺこりと頭を下げて去って行った。

見るからに爽やか。
肌が綺麗で薄めの顔立ち。
鼻筋が通っていて、
背が高い。

27歳、28歳くらいかな?
絶対年下。
でも、めっちゃタイプ。
どう見ても女に困らないでしょ。
危ない、食いつくところだった。
冷静に、冷静に!

次の日、朝のコンビニ。
また彼がいた。

「おはようございます!」

相変わらずさわやかだ。
その笑顔で何人の女の人を今まで癒してきたんだ一体。

「おはようございます。」
わたしは、ふつうにニッコリと笑顔を返す。
笑うと可愛いと言われる、この平凡な顔立ち。
能面のような作り笑顔を浮かべて、わたしは31年間生きてきた。
テキトーに交わし続ければ、いつか彼にも飽きられるだろう。
今まで出会った男達のように。

「お名前、教えてもらえませんか?僕は、タチバナカイトです」

出た、名前が若い!

「しみずみゆきです。」

「みゆきさんね、可愛い名前、ピッタリだ!」

「それはどうも。」

再び愛想笑いをし、わたしはレジに向かう。
いつものプロテインと野菜ジュースを買って。

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