僕を一人置いて行く世界を考えたことはあったけれど、僕が一人世界を置いていくとは考えたこともなかった。
そこで僕が手にした凶器は言葉、染めるのは青色。君は真っ白く美しいから一息で殺したくなる。
飛び出した流星に願う人がいる。
あの綺麗な澄んだ星は天国に近い場所だったんだと、誰かを思い出してまた、逃げたくなった。
霧が深い、とても赤くて寂しくなって、だから手にした青が心残りだった。
誰かの心が崩れ落ちたとして、それは透明に近く、遠くなることだろうと僕は全てを捨てたはずなのに、またそれを探してみようかと言う気になるのは正気か狂気かもわからないでいる。誰か答えをと、手に余らせる。
懐かしい舌触りも悲しい喉詰まりもいまはこの手に余っているのだから、僕は叫ぶ、思い出す誰かに叫びたいのに言葉は刃物に変わってしまった。
飛び出した自殺に考える人がいる。
ああ、それを投げつけたのは僕の方だったんだ。
僕はそんな悲しい夢を見た日には、必ず一杯の水を飲もうと決めている。渇いて仕方のないからだ。
「手を離さないで」
に小指を切ったその色が何色かすら思い出せない。さようならの味もわからないし涙の音もわからない。
夜のベランダで見つかるものなど、自分の落下速度しかないなと目を、閉じてみる。
目を閉じて浮かぶ彗星から溢れた赤は滑稽だった。
世界の呼吸は僕の知らないところで透明だと溜め息が出た。明日の朝にはこの星空も無色に廻っているのが当たり前。
君と僕が一体誰だったのかを知るための虚無はいまもずっと、夜空は広がり続け、浮遊し続けているのだろうか。
最後に投げたナイフがどこへ落ちたのかと探している。気が澄んで眠くなる前に、ぼんやりと浮かんだ背中とカーテンが白い。
それは透明に深い霧。いつも懐古に立ちはだかる。おはよう、いま何時だろうと朝が呼吸を始める肌触りだった。
嘘臭く、澄んだ空気は青かった。
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