『夏色の記憶』

音を立てて崩れゆく世界を前に、僕は一人故郷の思い出に浸っていた。
うだるように暑い日本の夏、鬱陶しいはずなのに、それがとても大好きだった。
雲一つないラムネ色の空から照りつける太陽を背に、決して色褪せることの無い四人の友人達は、笑いながら手を差し伸べる。
僕は太陽に目を細めながら手を取り、彼らと共に焼けたアスファルトの上を練り歩く。
何もかもが完璧に思える彼らは、とても眩しく輝いて見えた。
胸を掠める懐かしさを噛み締めながら空を見上げると、あの夏の空と同じ匂いがした。
「平和を願った僕らが戦争で滅びるなんて、笑えない冗談だよな」
透き通るほど綺麗なラムネ色の空にぽつりと呟いた。
あの夏のことは、いつになっても忘れる事はないだろう。
そんな事を考えながら、しばらく空を見上げていると、いつの間にか雨が降り出したようだった。
降り出した雨は少ししょっぱくて、暖かかった。

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