『初恋』

恋をしてしまった。
そんな甘々なセリフから唐突に恋が始まる恋愛小説を僕はいくつも知っている
「こんなことあるわけないだろww」そんな風に友達と笑いあっていた自分に顔向けができない。
なぜなら今僕は完璧に恋してしまっている。しかも信号待ちで偶然横に並んだ女の子に‼
自慢じゃないが僕は女の子とお付き合いしたことはない。正直な話、小・中・高と誰かを好きになったことさえ一度もない。
だが!今僕がこの女の子に抱いている感情は完全に恋愛だ!なんてこった!

そうこうしている間に信号が青になった。さあどうするどうする…
そんなことを考えながらとりあえず彼女と同じ方向へと向かう
駅前の商店街をくぐり抜け住宅街の路地へ向かう。特に何もできないまま10分経った。さあどうするどうする、さっきと全く状況が変わってないぞ。
やばい、こんなんじゃだめだ、次の角を曲がったら声をかけて呼びとめてみよう。うん、そうだ、僕ならやれる。
そうこうしている間に、彼女はパン屋の角を曲がった。
今だ‼‼

「ごめーん、まったー?」
そう言いながら彼女が駆け寄っていく先には、どこからどう見ても『彼氏』という風貌の男が立っていた。
「そんなことないよー、今さっき来たんだ」
「え、そうなのー?タイミング良いね(笑)」
仲良さそうに喋る二人。笑顔の初恋の女の子。そんな幸せそうな二人を見ていると
「あぁーー………。」
自分でも情けないくらい変な声が出た。
「今日はどこ連れてってくれるのー?」
楽しそうにおしゃべりしながら歩いてゆく二人。そんな二人の後姿を呆然と立ち尽くしながら見ていた。
バイバイ。なんとか心の中でこう唱えて
僕の30分の初恋は終わった。

起承転結が綺麗にまとまっていて、とても読みやすかったです。 一人称語りだと、感情メインになり風景が頭に浮かびにくいというデメリットがありますが、この文章では主人公の様子が、まるで絵を見ているようにはっきりと伝わりました。