『神様』

私は、幾百幾千と人の営みを見てきた。
そして人々はいつしか、私を祭り上げ、信仰するようになっていた。

私は沢山の祈りを受け、それに報いる為に沢山の出会いを与えた。
時には私自身が人里に降りることもあった。
私も人と同じ時を生きて、道を歩む。
なんとも楽しい一時だった。

だが時代は流れ、過去は歴史となる。
今や、私を信仰している者など僅かだろう。
それでも私は見たいのだ。
人の生きる姿を
必死にもがく人の美しい生き様を。
私達にはないその美しさを見ていたいのだ。
「命儚き人間よ。その生、無駄に散らさぬよう必死に生きよ」
人々は、今日も目まぐるしく生き続ける。

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