『卵の中の君』

熱せられたフライパンに卵を落とす。
殻の中から
昨夜別れたばかりの彼氏が出てきた。
彼氏というか元彼か。
フライパンの上で慌てふためくその姿に
昨日あれだけ涙を流したはずの私が
大声で笑ってしまっていた。

何をあんなに焦っていたのだろう。
毎日が不安で不安で
見えない明日に溺れていたのかもしれない。

ふと気が付くと
フライパンの上では元彼ではなく
元生卵が悔しそうに焦げ付いていた。

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