子供の頃描いた夢は、とてもかっこよくて輝いていた。
けれど、大人になるにつれてその輝きは失われていって、いつの間にか夢は現実にすり替わっていく。
「いつから夢を笑うようになったんだろうね」
夏の夜空を見上げ呟いた。
移り変わる現在に置いていかれる虚しさ。
変わりゆく未来に対する拒絶。
身体中を這い回る自己嫌悪で、もうどうにかなりそうだった。
「なぁ、鈴。僕はどうしたらいいのかな」
記憶の中の君に問いかける。
君の言葉、君の笑顔、君との思い出が胸を満たしていく。
「やっぱり、鈴には敵わないな」
そう言うと僕は重い腰を上げて、帰路に足を向ける。
少しだけ楽になった身体を動かしながら君との思い出をそっと胸にしまい込んだ。
身体中を這いずり巡っていたものはいつの間にか無くなっていた。
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