『ひっこし』

冷たい指で全身をなでられているような、そんな冷気に包まれた部屋。
そこに一人、僕はいる。
引っ越ししたての数日間はいつもそうだ。
ダンボールに囲まれ、慣れない空間に緊張感を覚える。
一緒に引っ越してきた小物や服に目をやって心を和ませようとするが、そんなものは気休めに過ぎない。
日が沈み明るさを失った外と同期するかのように、室内に暗がりができ、僕の心にも孤独感が襲ってくる。

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