「それでは、信じてはくれないのですね」と彼は悲しそうに言った。
「ええ」と彼女は頷いた。その目には血の通った残酷さのようなものが見えた。他者の命運を決定することに慣れた者だけが持つことのできる目だ。
「あまりにも独りよがりの自殺ですもの」
二人は一世代前の金持ちが好みそうなホテル風の会議室のような場所にいた。部屋の真ん中に置かれたマホガニー製のテーブルを挟んで二人は座っていた。自殺した者がこのような場所に運ばれるとは思っていなかった。では、健全な死を迎えたものはどこへ行くのだろう、と男は思った。
聞いて答えてくれるような気はしない。
彼は視線を落とし、ため息をついて机の上の葉巻を手にとった。キューバ産の上等なものだ。だが火をつけてすぐに、それを味わう気持ちになれないことに気がついた。あらゆるものが慌ただしく現れ、対処する間もなく消えていく。葉巻とはそのような状況で吸うにふさわしくないものだ。
「あなたには残念なことかもしれません。でもここ30年くらいは、もうあなたのような死に方をした人の中で、あの扉の向こうへ行くことを許された人はほとんどいません。」
「おそらく時代のせいでしょう」と男が言うと、女は軽蔑の落胆の入り混じった表情を浮かべた。
「そのようなことだから、ここに来ることになったのですよ」
彼女は立ち上がり、風景に溶けるようにして消えていった。
全ては終わったことなのだ、と彼は自分に言い聞かせた。彼は葉巻を机の角に押し付けて消し、ブラインド越しに窓の外を見た。男が一人、高層タワーの頂上から飛び降りるのが見えた。その時、彼は自分が泣いていることに気づいた。なぜだか検討もつかない。でも涙は溢れ出て止まらなかった。彼は両手で顔をおおい、床に膝をついた。
彼もまたここに来るのだ、と男は思った。死んでなお拒絶されるために。
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