『怪物は貴方の隣に』

小さい頃、親友が病気で死んだ。
治らない病気だった訳じゃない。
でも、治すには莫大なお金が必要だったんだ。
ベットの上で苦しむ彼を見て、子供ながらに僕は悟った。
この世はお金が全てなんだと。

だから大人になった僕は、ひたすらにお金を集めた。
お金が集まるうちに、気がつけば権力がついていた。
その権力を使って、さらにお金を集めた。
友を裏切り、家族を捨てて、それでもなおひたすらにお金を集め続けた。
そして、いつからか僕は怪物になっていた。
人の言葉なんてもはや通じない怪物に。
金で大地を踏みしめ、権力で言葉を喋る。
力は日に日に増していく。

そんなある日の事だった。
久々に取れた休みを使って親友の墓参りに行くことにした。
友の墓前で沢山のことを話した。
懐かしい思い出話や最近の近況など、彼に語って聞かせた。
「また来るよ」
そう言って、足を踏み出した時にふと思ったのだ。
何故お金を集めているのだろうと。
失わないためにお金を集めてるんじゃ無かったっけ。
それに気がついた時には、全てが遅かった。

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