『トワイライトの果てに』

「夏は嫌い。…だけどね、この時間だけは特別なんだ」

 繋いだままの手と、黄昏にはためく白いワンピース。
 大都会の音を遠くに聴きながら、隣で土手沿いに座った彼女はにっこりと笑った。

「高い建物に囲まれて生きてるとね、右も左も分からないまま知らない人に流されて…狭い世界の中に閉じ込められてる気がするの。でも…日が落ちるまでのこの時間帯は、そんな日常がフェードアウトして行くみたいって感じる。都会の夏は、やっぱり夜でも暑いけど…夕方の風って、理由は分からないけど涼しいでしょ?…一瞬の、時間の切れ目みたいなんだ。華やかな東京も、夕方だけは別の世界みたい」

 口元に浮かべられた寂しげな笑みは、ふわりと頬を撫でた穏やかな風に掻き消される。
 川の向こうで煌めいたビル群…その隙間を茜が落ちていくまで、彼女の揺らめいた瞳はずっと滲む景色を映していた。

論点が夏から夕方に変わってるかな...? と思いました。 それ以外は表現もお話もすごく綺麗だと思います!