『ボクは君が好き』

どうしてなのだろう。人生が、上手くいかないのは。私はこんな辛い思いをしているのに、何も良いことがない。
誰か助けてくれる王子様がいたらいいのに。

いつも通り、仕事を終えた帰り道、100円ショップでいくつか買いたいものを買う。
26歳独身、彼氏はいない。いつもの通り、満員電車に乗り、自宅に帰る。

家に着くと、疲れがどっと出る。また明日も、同じことの繰り返しで、朝起きて、仕事をして、自宅に帰る。
そんな毎日は飽きていた。せめて、彼氏でも出来たら状況は変わるのかもしれない。

私はベッドに伏せて、クマのぬいぐるみを見つめる。
「ねぇ、どうして、私はこんな辛い思いしなければいけないのかな。」
ぬいぐるみに話しかけると、当たり前のように、返事は帰ってこない。
「彼氏ぐらい出来たっていいのにね。」
「じゃあ、僕と付き合う。」
一瞬、耳を疑った。なんと、ぬいぐるみが話し出したのだ。
「なんで、ぬいぐるみが話せるのよ。」
「僕、実は人間だけど。ぬいぐるみの姿になっちゃってさ。」
突然、ありえない現象が起こったので、私は困惑した。まさか、ぬいぐるみが人間なんて、おかしいと思う。
私の頭がおかしくなったのかと思ったが、聞こえてくるのは、男の人の声で間違いない。
「ねぇ、僕の話を聞いて。」
「その前に、名前は何て言うの。」
「僕の名前はユウキ。」
「ユウキ君、どうして、ぬいぐるみになったのよ。」
「うーん、前に付き合っていた彼女に、振られて、泣き続けていたら、こんな様になった。」
こんなことが現実的にありえるのだろうか。腑に落ちないが、彼がそう言うので、信じてみることにした。
「歳はいくつのなの。」
「21歳だよ。」
「若いのに大変だね。」
「でも、人間の姿にもなれるみたい。」
「えっそうなの。」
「たった、一時間だけどね。」
すると、ぬいぐるみが、ピカピカと光りだして、眩しくなった。ふわぁーと煙がモクモクと溢れて、消えていくと、
男の人が、一人立っていた。
「あれ、どうして、さっきのぬいぐるみは。」
「へへっ。」
すると、目の前に現れたのは、想像もできない、美男子だった。彼の顔を見ているとハッとなった。小さい頃、
一緒に遊んで、世話をした、ユウキ君じゃないか。
「僕のこと、分かったでしょ。」
「僕がこれから、君を幸せにするよ。」

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