『between ”Distiny”』

 近くにあるのに遠い二点。
 薄っぺらいのに絶対に壊せない壁。
 絶対に交わらない世界に生きる私と彼。
 …「恋愛に性別なんて関係無い」「障害なんて無くすべきだ」なんて叫ばれる今の社会…叶わない想いを泣き叫ぶ夢女子がこの世には何人存在する?

 同じ世界の男に興味なんて持てなくて。
 モノクロの最中で彼に出会ったあの時、空疎な世界が鮮やかに息を吹き返すほどに形容し難い運命を感じて。

 同担歓迎なんて出来るものか。
 自分の好きな人が人気者だったら悔しいだろうが。

 
「_だから何?醒める事の無い夢に沈み込んだ気分はどう?」
なんて、鏡の中の自分が嘲るように笑う。

 …違う。私は『夢』に囚われているんじゃない。

 絶対に報われなくても。
 関わる事すら出来なくても。
 それでも…相手を諦めきれないのは、一人の人間として、男として彼が好きだから。

 次元なんて関係無い。滑稽だろうが哀れまれようがどうでも良い。

 三本のベクトルの中で生きる私も、平面の中で半永久的に生き続ける彼も、全部が全部かけがえのない現実なんだ。

この短編小説にはまだコメントがありません。
ぜひ一番最初のコメントを残しましょう。