『Envy Fly』

 上辺だけの馴れ合い。
 薄っぺらな愛の言葉。
 それって、そんなに大切なものですか___。

 昔から、他人に興味が無かった。
 友人からの惚気も自慢も「へえ、そうなんだ」くらい。
 …自分が大好きなのは分かるけど、他人より自らを誇張して何が楽しいんだろう。
 全て、どうでも良い。好きでも嫌いでもない。
 自らを飾り立てるあからさまな傲慢さに、一体何の魅力を感じるんだろう。

「…ねえ、聞いてる?考え事?」

 なんて声が私を現実に引き戻して、緩く巻かれた長い茶髪が心配そうにこちらを覗き込む。
 …この子、口元にピアスなんて開けてたっけ?いや…そもそもこんな顔だっけ?
「…大丈夫。ちゃんと聞いてたよ」
「良かった!でさ、その時彼氏がさ~」
「…あれ、この間別れたって言ってなかった?」
「ああ、ソイツとは別の彼氏。一昨日出来たんだよね~」

 ケラケラと笑う瞳のその奥…ひけらかした自己愛のその先は、私という鏡を利用しているだけにすぎなくて。
 …きっとこの子は酔っているだけ。「他人とは違う」という優越感に溺れて、自分は特別だと思い込んでいるだけ。

 でも…それはそれで、良い事だと思う。誰かと自分を比較するって事は…その相手を敵視してるって、意識してるって思いの表れだと思うから。

「…へえ、凄いね」

 そんな貴女が羨ましいよ。
 いつも他人の目を気にしてお疲れ様……ってね。

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