『現代創作童話 桃太郎』

桃太郎は鬼を退治し、サル、キジ、そしてイヌと一緒に家路についた。
鬼ヶ島を出発して約1週間、桃太郎はサル、キジ、イヌと別れた。もちろん連絡先は交換したが、住んでいる場所がそんなに近くないため、今後はなかなか会うことができないだろう。
数週間の旅だったが、それでも別れは寂しく、別れる際には熱い抱擁を交わした。

家に帰ると、おじいさんとおばあさんが桃太郎の帰還を喜んで迎えてくれた。
桃太郎が鬼を退治したことももちろんだが、桃太郎が無事に帰ってきてくれたことがおじいさんとおばあさんにとっては何よりも嬉しかった。
「桃太郎よ、無事に帰ってきてくれて本当にありがとう。お天道様にも感謝じゃ」
「本当よね。桃太郎が無事に帰ってきてくれて私もすごく嬉しいわ」
おじいさんとおばあさんはそう言って桃太郎を抱擁した。桃太郎も大好きなおじいさんとおばあさんのもとに帰ってこれたてすごくホッとした。
「おじいさん、おばあさん、私がこうやって帰ってこれたのはおじいさんとおばあさんのおかげです。出発するときに持たせてくれたきびだんごがあったからこそ鬼を退治できました」
「きびだんご? きびだんごは持たせてあげたけど、あれがどうかしたの?」
「あのきびだんごを道中でサル、キジ、イヌにあげたら、私の味方になってくれました。彼らの協力があったからこそ鬼を退治できたのです。もしきびだんごを持っていなかったら、彼らを味方にすることはできなかったでしょう」
「なんじゃと? ばあさんの作るきびだんごにはそんな効果があるのかね?」
おじいさんは驚いておばあさんに尋ねたが、おばあさんも驚いているようだった。
「きびだんごにそんな効果があるなんて知らなかったわ」

次の日、おばあさんは以前と同じ作り方で再びきびだんごを作った。
おばあさんやおじいさんにとっては、そのきびだんごは比較的食べ慣れたものであり特段おいしいものではなかったが、もしかしたら動物たちにとっては信じられないぐらい美味しいものなのかもしれない。
そう思ったおばあさんは、そのきびだんごを持って山に向かった。
すると早速、山の中でたぬきに会った。
「たぬきさん、こんにちは。きびだんごお一ついかが?」
「こんにちは。こんなに美味しそうなものもらってもいいんですか?」
そう言ってたぬきはそのきびだんごをもらい、早速口に放り込んだ。
「これは美味しい! もう一つ頂けませんか?」
「はい、どうぞ」
そう言っておばあさんは10個ほどきびだんごをたぬきに手渡した。
「こんなにいいんですか? ありがとうございます」
「どうぞいっぱい食べてちょうだい」
そう言っておばあさんはたぬきと別れて山の中を進んだ。
その後も色々な動物に会ったが、どの動物もきびだんごのことが好きで、おばあさんがきびだんごを渡すと非常に喜んだ。

おばあさんはその後、きびだんごを製造・販売する会社を設立し、おじいさん、桃太郎と幸せに暮らしたとさ。
めでたしめでたし。

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