『サキ -受胎告知-』

空と大地が繋がる。

ガラスのような、鏡のような足下には、青い青い、蒼穹。‪

少女は歩く。
振り返りもせずに前へ。
長く白い髪が揺れる様が、蒼穹に映える。
何を喋るでもなく、ただひたすらに歩いて。

「——」

不意に、少女が振り返る。
エメラルドグリーンの瞳。
かすかに開いた小さな口元。
白い髪が、後ろへと流れて、何も語らない少女は立ち止まる。

足元の蒼穹はどこまでもどこまでも先へと続いていて、振り返ってもそれは変わらない。
前も後ろも、右も左も、青、蒼、アオ——。

少女は再び歩き出す。
白い少女は蒼穹へと溶けていく。
両手をひろげて。

少女と空を映し出すガラスの大地。
ひび割れて、そこからは光が溢れ出して、空を照らす。
光の中、少女はその瞳に蒼穹を映しこませて、今度こそ解けるように溶けて消えた。

蒼穹は変わらず続く。
始まりも終わりも見当たらない。
包む静寂は、少女の消滅だけを伝えて……。

そんな映像が、ぶつりと途切れた。
ずっと見てきた幻想が、終わりを告げる。

「サキへ——いきましょう」

受胎が、始まる。

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