『「死」No.18』

友人が死んだ、友人が死んでしまった。

何年も会っていなかった友人が死んだ。

何年も会ってなかったくせに、思うところがある。

あいつとあの話をすれば良かった。

周りを見回した。

他の生きている友人が数人いた。

じゃあ生きている間に、生きている彼らとどう過ごすのだい?
何を話すのだい?
何を共有できるのだい?

分からないや。

死んでくれないときっと思い出せないんだよ。



最愛の人が死んだ、最愛の人が死んでしまった。

生活の一部になっていた最愛の人が死んだ。

何年も一緒にいて空気のような存在なのに、思うところがある。

あいつとあの話をすれば良かった。

周りを見回した。

友人や親戚はいても、最愛の人はどこにもいない。

じゃあ生きている間に、生きている新しい出会いがあるとして、新しい人とどう過ごすのだい?
何を話すのだい?
何を共有できるのだい?

分からないや。

君は世界に君しかいないのだから、今は考えられないんだよ。



母さんが死んだ、母さんが死んでしまった。

何年も会っていなかった母さんが死んだ。

何年も会ってなかったけれど、いつも思っていた。

母さんとあの話をすれば良かった。

周りを見回した。友人が数人いた。

じゃあ彼らの母さんが生きている間に、彼らは彼らの母さんとどう過ごすのだい?
何を話すのだい?
何を…

母さんは誰にでも一人しかいないのだよ。

      ほな!

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