『「ドラゴン」No.40』

小さい頃からそこは海だと思っていた。

残念な事に海では無かった。

そんなにも落胆はしていないが、僕は所謂ドラゴンの子供だ。

子供と言っても、もうすぐ生まれてから百年経つ。

大人になる為には後九百年はかかるよ。

ずっと海だと思っていた湖に、住んでいるよ。

ここは住みやすいんだ。

食べ物も豊富だし、気候に変化がそれほども無いので、穏やかな気持ちで過ごせるのさ。

友達はいないよ。

生まれた時から一人だったし、誰も訪ねてこないし、僕はまだ子供だからそんなに移動もできないんだ。

まだ子供だから体力が無いよ。

火が吹けるか?そんなの無理だよ。

それは何処かの誰かの作り話だろ、知らないや。

僕の大きさかい?僕の大きさはねぇ、ワンちゃんくらいだよ。

いいだろー。

背中に羽?羽は無いよ。

ヒゲならちゃんとあるぜ。

何を食べているのか?そうだなぁ、何でも食べるさ。

生き物も食べるし、葉っぱも食べるんだぜ。

空は飛ぶのか?ううーん、先では知らないけど今のところ跳ねる程度だな、なんせまだ子供だから。

いつかは飛び回りたいね。

っとその時、ドラゴンの子供は漁師の網にかかってしまったのだ。

漁師

「あっ、畜生これデカイけど不味いんだぁ。しかもおら達の漁場を荒らす天敵さ」

ってな具合でドラゴンの子供と思い込んでいる、巨大ナマズは舟の甲板でシメられ、バラバラに切り刻まれ再び湖に捨てられた。

他の魚のエサになった。

       ほな!

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