『右左、左右』

 そこのお客さん。あなたはこの国に伝わるおかしな話を知っていますか?
 昔のことだ、国王を補佐する優秀な部下が二人いた。軍事に優れ、盗賊団の本拠地を一人で壊滅させたという功績を持つ右方。内政に優れ、荒れ果てた土地を大農園にして国を豊かにした左方。国王も二人のことをとても信頼しており、何か問題があれば必ず二人に相談していた。二人もその信頼に応えるべく、二人で対立しないようにしていました。
 ある日のこと、国王は二人への感謝の証として今より優れた官職を与えようと考えた。そのため、国王は国で最も博識だと言われる博士に優れた二人に贈る優れた官職名はないのかと尋ねた。
「それならば国王様。古来、この国を蛮族から守った左将という人物の名前を右方様の官職名に、建国当時の国王のご意見番であったという右将という人物の名前を左方様の官職名にするのはいかがでしょうか?この二つは国民も幅広く知っている昔話です。」
 国王はこの二つの名前を非常に気に入り、王宮に戻った後さっそく二人に新たな官職を与えた。それによって右方様は右方左将となり、左方様は左方右将となった。
 しかし、この二人の呼び方は王宮内ですぐに問題となった。そこで、右方は国王へと進言した。
「国王様、新しい官職についてですが非常にややこしいです。書類で私と左方の役職名が逆になっていたりしています。このままでは官職名として面倒くさいだけの物となってしまうので入れ替えてくれないでしょうか?」
 国王は左方の提案を受け入れ、次の日から右方左将は右方右将に、左方左将は左方左将となった。
 これで問題は解決したかと思われたが、今度は左方が入れ替えたことによる問題点を訴えた。
「国王様、この右将左将の話は国民も広く知っているため国民からすれば私と右方で得意な事と官職名が違うことに違和感があるでしょう。多少の不便さがあっても昔話を参考にしたのですからその通りにするべきです」
 国王はこの提案を受け入れ、二人の役職名は元に戻した。しかし、そのことに右方は不満を抱き、二人は口論するようになった。
 二人の喧嘩は国中での騒ぎとなり、国王はこの問題をどう解決すればいいのか頭を抱え、博士は寝込んでしまった。
 お客さん、この話は本当にある話なんです。今は十六代目右方様が十七代目左将で十七代目左方様が十六代目右将、国王は代替わりしてもこの問題に悩み続け、寝込んだ博士は今でも起き上がってきません。

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