『白ウサギと呼ばれた配達人(1)ルーンからの手紙』

ここは、地球とは異なる世界セルン。 セルンには東西南に大陸があり、北はどこまでも続く大海原が、その果ての海の先には楽園があると言われている。

文明は地球でいう馬が活躍し、まだ騎兵が主力だった頃。戦争と言えば人と人がぶつかり合っていたそんな時代が近い。動物の毛皮や毛から服を人の手で作る手工業しかなかったそんな時代。

東西南に分かれる大陸では技術の進歩と魚竜種の減少により、進出しやすくなった海を渡ろうと船を作り、他の大陸との交易をし富を得ようと大勢の者達が互いに競い合っていた。

この話はそんな流れを無視するかのように東大陸中央に位置するイエンルン王国。

王国最南端、カゼフの村から始まる。

「婆ちゃん、隣の村から手紙が来てたよ」

手紙箱に入っていた赤色の手紙を少年は暖炉の前の椅子に座っていた老婆に手渡す。少年の名はカルロ、いつか東大陸一の冒険家になると夢見ている6歳児であった。

「ありがとうカルロ、婆ちゃん助かったよ」

老婆は孫の頭を撫でながら手紙の宛名を見る。手紙の送り主は王都にいるはずの息子から。何か嫌な予感がすると思いながらも老婆は手紙を読み始めた。

『母へ、お元気ですか?私は今王都を離れ、港町のザレイアナに品物を届けに行っています。荷物に関して細かい詳細は書くことは出来ません。しかし母が言っていたことが現実になろうとしています。追っ手は村に来ることはないでしょうが気をつけて下さい。 追伸 カルロには祭りに間に合わないこと謝っといて下さい。ルーン』

「本当にあのバカ息子は…」

ため息をつきながらも老婆はカルロに息子の帰りが遅くなること。それをどう伝えようかことばを選んでいた。

少し話が脱線してしまうがこの世界では大陸ごとに気候や気温が大分異なる。その中で東大陸は四季があり、温度差はそこまで差異はない。

そして今の季節は収穫の秋。手紙の主ルーンが言っていた祭りとは一年に一度、豊作と大地に感謝するカゼフの村一番の奉納祭のことを指していた。

村から離れている者たちもこの時期になると家族の元へ帰り、冬を一緒に過ごし春になったらまた村を離れるという生活を送っていた。

カゼフの村は王国最南端、それより南は森が続き、千年ほど昔にあった古王国の遺跡しかない。村自体仕事が多いわけでもなく、昔と違いほとんどの遺跡が掘り尽くされている。
トレジャーハンターや冒険者など宝を求め森に向かう連中は今や一、二パーティぐらいしかいない。

そういう訳もあり出稼ぎに出てる者達が多いこの村では奉納祭は盛大に行われ、皆が祭りを楽しみにしている。

話を戻すと当然老婆の孫カルロ少年もルーンの帰りを今か今かと待っている。まだキラキラした笑顔を浮かべながら村を歩き回る少年をどう納得させるか彼女はことばを選びながらも孫に対して説得を試みた。

内容については割愛させていただくが、しばらく老婆は孫に口を聞いてもらえない仕打ちを受け、ため息をついた。息子は誰に似たのか、自分に似たという事実を認めず夫に似てしまってと先ほどより深いため息をつく。いつまでもそうしてる訳には行かず、彼女は息子に送る手紙を書き始めた。

実はまだこの物語の主人公は登場していない

しかし今回はここらへんで終わらせていただく

この続きは老婆が息子宛の手紙を手紙箱所に持っていく場面から始めていこうと思う

【白ウサギと呼ばれた配達人(2)へ続く】

ファンタジーな物語も書いてみました。続きます。誤字脱字等ありましたら教えていただけると恐縮です。 次は主人公が出て来ますのでよろしくお願いします。