その他

  • 換気扇の回る音が鬱陶しく、また外から漏れ聞こえる蝉の声も神経をささくれ立たせた。 女は今、今年一番と言っていい程最低な気分であった。まだ1年の半分も残っているが、それはそれである。 ふと横を... 続きを読む
  • 「ハッピーバレンタイン。…それと、遅くなっちゃったけど4ヶ月記念も兼ねて」  シンプルな紙袋を差し出して、ソファの隣に腰かけた恋人がはにかむように微笑んだ。こちらに寄せた花の顔から、彼女が... 続きを読む
  • 私の彼は、私の家に住み着き、私を飼っている。 もう部屋のなかの統一性のなさ、せまりくる私の居場所は隅しかない。 携帯のアドレスやラインなども消され、友人との連絡もとれず、ネットに関しては見張... 続きを読む
  • 「ねえ、主様。雪とは、本当に綺麗なものと思いんすか?」  絹の夜着に溶けた温もりの向こうで、女の声がゆるく飽和する。遠くで聞こえる衣擦れに瞼を開けると、窓辺に坐した花魁は街を見下ろして小さ... 続きを読む
  • 「その髪飾り、彼岸花か?白いものがあるとは聞いた事が無いが」 「あい。先日馴染みとなった呉服屋の若旦那が、『白い彼岸花は珍しいんだ』『きっと月下香に似合うから』とわっちに贈って下さいんした。…... 続きを読む