純文学

  • 終点にて湯納
    うたた寝をしていると、一陣の風が鼻先を撫でた。 ふと、あの人の匂いがした。 暖かくて、懐かしい匂い。 脳裏によみがえるのは、楽しかった思い出ばかりだ。 体を起こし、辺りを見回すこ... 続きを読む
  • 6台並んだベッドが満員だ。 ここは大手のエステサロン。スタッフ6人いても 電話が鳴ったり、カウンセリングをしたりで人手不足だった。新規客がベンチに4人待っていた。白いガウンを着て 目は私達ス... 続きを読む
  •  私の名前は 坂上 夏目(さかがみ なつめ)。 「最近の誘拐犯ってのは何を考えてるんでしょうね?」  職場でふとそんな話題が出た拍子に背筋にいやな汗がジワリとにじんだ、そんな女だ。 「昔だ... 続きを読む
  • 「ごらん、あれはお前の栗の木だ。」そう言って隣の部屋から父の声がした。 兄と私は六畳一間を仕切りで分けてそれぞれ自分の部屋として使っていた。母が夜勤の日の夜、父は誰かにそう話していた。「ウフフ... 続きを読む
  • 隆は、ある日曜日、子供3人連れて公園に出かけた。美和が昼ご飯を作る間、戸外に子供を連れ出すのが日課だ。 公園の横に中古物件売り出し中の、のぼりがたっているのを見た。 とうとう、売りに出された... 続きを読む