純文学

  • 無題二色燕丈
     溺れてしまったこの恥じらいに私は浮遊を恐れうつ伏せになったのでした。  そこに立っている貴方を見ることもないように顔も背けていれば、幾らか死ねるような気すらしたのです。ですが私はその貴方... 続きを読む
  • 消失二色燕丈
     吐き散らかした錠剤と噛み殺した言葉に一過性と名付けたのならその沈痛作用は頭のなかで死んでいくのだろうかと空気の中を泳がせる。  意識が浮いたら耳が痛い。  昨日何をしたかを思い出せ... 続きを読む
  •  ピアノの音が、泣いている。  ステンドグラスがオレンジになっていくようなこの時間、私の信心的な気持ちが反響と共に消化されていく。  チャイムが、鳴って。  ピアノの音は止んでしま... 続きを読む
  •  孤独と言うのは肌身離さず難しい。  男は電車の斜陽に乗客を眺めた。  ここには女や男や子供や老人が居合わせるに関わらずそれぞれが個体として生きているとしてエンターキーを打ち込んだ。 ... 続きを読む
  •  丸く白い大皿の上で、他の六尾よりもほっそりとしたそれを見て落胆する。お腹がぷっくりと膨らんだ子持ちししゃもの素揚げが並ぶ中、母の目の前、皿の縁近くの直線的なししゃもが、一匹だけとても目立っ... 続きを読む