純文学

  • 「ナオト」と呼ばれても自分が呼ばれてる気がしない。「ナオト」は俺の名前だが、ほとんどあいつの名前だから。人気者の「ナオト」俺も同じ「ナオト」だと知らないクラスメイトもいて「あれ? お前もナオトな... 続きを読む
  •  祝福してくれる?と彼女は言った。彼女が抱えた愛と無垢の象徴は、呼応する波の音に小さく頭を揺らしていた。  黙ったまま、その小さな掌を見つめる。少し空を彷徨っていた手は、やがてあるべき場所に落... 続きを読む
  •  嘘だと言ってほしかった。だれかに肩を抱かれるのをずっと待っていた。とっくにこの肩は都会の夜風と喧騒にまみれて冷え切っていたというのに。縋るように目を細めて見つめた先には、いつだって明けもしない... 続きを読む
  •  高校生時代に、彼は生徒会の副会長だった。 受験校だから、皆、生徒会役員など敬遠するのが普通なのに、谷川登はお人好しなものだから、担がれて副会長になってしまった。  なった以上は、何か新... 続きを読む
  • 普通秋の音
    普通、フツウ、ふつう。 私は、いたって、普通の女だ。特に秀でた所もなく、20年間生きてきた。家族との関係も良好で、 付き合ったばかりの彼ともうまくいっている。 大学での、生活は楽しいし、こ... 続きを読む